今回は久しぶりのいろいろ紹介。
以前紹介したブギーポップシリーズの三作目、『パンドラ』です。
初期のブギーポップシリーズは作品ごとに作風が変わります。前回の『ペパーミントの魔術師』がさながらトレンディドラマなら、今回は群青劇とでも言えばいいでしょうか。
物語は男女六人の若者グループのお話です。しかし年齢こそ近そうではあるものの、彼らはお互いに住んでいる場所や通っている学校も知りません。それでも時々集まって活動を共にする彼らの共通点はひとつ、未来予知ができることでした。
彼らの予知の方法はそれぞれ違います。これから逢う人が見えたり、これから嗅ぐ匂いがわかったり、これから起きることがなんとなくわかったり。それはどれも単体では明確な未来を予知できない、不完全な能力でした。しかしお互いの予知が重なり偶然出会うことになった六人は、全員の能力を足して補うことで明確な未来予知を行おうということになり、グループとしての活動を始めます。そして何度目かの予知の際、ブギーポップの影が浮かび上がるところから物語は動き始めるのです。
とまあなぜこの作品を取り上げたのか。それはこの作品が私のHSP交流サークルのモデルでもあるからなのです。
実は彼らの中には予知ができることを偽った偽物の能力者もおり、そしてお互いそれに勘づいてもいます。しかしそのことを糾弾したり、その人を除け者にすることはありません。なぜなら彼らは気づいているからです。未来予知という能力はきっかけでしかなく、一緒に同じ時を過ごしているのは、単純にお互いを気に入っているからなのだということに。
以前から私は、交流会に参加する方は自己診断で構わないとお伝えしてきました。なぜなら遺伝的なHSPかどうかを調べる術はないことと、少なくとも同じような辛さや経験をしてきたのであればお互いに理解し合える、そして支え合えると思っているからです。例えば繊細さ故に傷ついた時、同じ思いを共有することで回復することができたなら、繊細さという特性はあっても生きづらさにはならないかもしれない。そんな期待を持っているのです。
HSPはあくまでも私たちを構成する要素のひとつでしかありません。HSPだから同じということもなく、合う人合わない人もいて当然です。それでもその共通点があることで、気の合う仲間を見つけるきっかけになるかもしれない。そしてこの社会と渡り合っていくための励みになるかもしれない、と思うのです。
そんな想いを抱かせてくれた「ブギーポップ・イン・ザ・ミラー『パンドラ』」。実は決して明るい話ではなく、ラストはハッピーエンドとも言い切れない結末です。それでも新たな一歩を踏み出す力をくれたものであることも事実ですので、興味のある方は読んでいただければと思います。
ちなみに私は小説を読む時に勝手にテーマソングを決めたりします。この作品は鬼束ちひろさんの「Cage」という曲がピッタリだと思ったので、そちらも合わせてチェックしてみてはいかがでしょうか。