このお正月に久しぶりに映画館に行きまして。昨年話題になっていた『国宝』をようやく観ることができました。
演出や映像美など素晴らしく、これは映画館で観たほうがいい作品だと思います。
そしてストーリーなのですが、中々自分の中で消化することができず、丸一日考えて出た結論。苦手な作品でした。率直に言うと気持ち悪い。
劇中では、歌舞伎の美に魅了され、様々なものを犠牲にしながら挫折と栄光を手にする主人公が描かれます。
主人公は初めて人間国宝の演技を目の当たりにした時、怖い、化け物だ、と思いつつも強く魅了され、ついには悪魔と契約してでも日本一の歌舞伎役者になろうと決断します。何となくゲーテのファウストみたいですね。
そうまでして目指した美しさ。私はそこに魅力を感じられなかったのです。
私にとって「美」とは、人の暮らしの中にあるものだと思っています。人を思いやる所作。大切なもののために振り絞る勇気。敢えて言葉にしない優しさ。人を超えるのではなく、全ての人の持つ心の中に美しさはあるのだと思っているのです。
この作品は、フィクションであるが故に理想が具現化され過ぎているような、人間の物語とは思えないように感じました。あるいはそれが制作者の意図なのかもしれず、だとしたら素晴らしく完成度は高いのですが、その完成品に魅力を感じないのです。もちろん私の個人的な意見ですが。
同じ毛色の作品であれば、ボヘミアン・ラプソディの方が人間らしくて好きです。ていうかゲーテのファウストですら、最後は人間の愛に救われる話なのですが、国宝はそれを突き抜けて最後は独りって感じでした。
でも作品を否定しているわけではないのです。こういうものがあるのはいいと思います。私の感性だけが絶対ではないですから、各々が好きな作品を愛でればいい。美しさや迫力は本当にすごかったですし。
ただこれを絶賛する人が多いって大丈夫?自分たちを卑下しすぎて悪魔に魅入られてない?人間の持つ素晴らしさを忘れてない?という、この作品を取り巻くムーブメント全体を見たときに、何か気持ち悪いというか怖いなぁと感じてしまいました。