小さい頃の私は物分かりのいい子でした。
立派な仕事をしていた母はしばしば仕事で家を空け、こどもながらにその大切さと大変さをわかっていた私は、いつも何も言わずにその姿を見送りました。
私が覚えている一番古い記憶は、3歳ぐらいの頃。夜布団の中で「今日はママ帰ってくる?」と父に聞いていたことです。
私は寂しかった。もっと見てもらいたかった。褒められたかった。
小学校に上がる頃、ランドセルを買った時でしょうか。お店からのプレゼントで二つの本を選ぶことになりました。それは漢字辞典とことわざ辞典。私はことわざ辞典が欲しかった。でもママに褒められるような優秀な子供でいたかった。だから漢字辞典を選びました。欲しくなんかない漢字辞典。その後一度も使わなかった漢字辞典。
ママ、僕を見て。僕を褒めて。僕の気持ちをわかって。
たぶん周りの大人からしたら、すぐに忘れてしまうような些細なこと。でもそんな些細な記憶が積み重なって、今の私ができています。そんなことを考えた時、自然と涙が溢れてきました。
よくがんばったね私。大丈夫、今は私が傍にいる。決して離れたり見捨てたりしない。私を育てるのは私だから。
誰に理解されなくても、誰に優しくされなくても関係ない。私は私と生きていくのです。
これからも。