いろいろ紹介第2回。今回は漫画家の豊田徹也さんです。好きな漫画ではなく好きな漫画家さんですが、私はこの方の作品が大好きで同じ時代に生まれてよかったとさえ思います。中でも好きなのは『アンダーカレント』。と言ってもこの方、読み切り作品ばかりで連載したのはこのひとつだけ。しかも全一巻という濃縮具合です。
お話は、実家の銭湯を継いだものの婿養子の旦那が突然失踪し、銭湯の組合から寡黙な男性がお手伝いとして派遣されてくるところから始じまります。主人公の女性と銭湯を中心として物語が展開しますので、とにかく小規模かつ地味。しかし表向き穏やかに流れる日常の下で暗流(under-currrent)するそれぞれの想いが、物語を深く濃密なものに変えていきます。いわゆる行間を読むタイプの作品で、おそらく構成は最初から決めていたのでしょう。ストーリーの破綻もなく、すっきりとした読後感が味わえます。しかしラストの一コマの意味に気づくかどうかで結末が180度変わるという点でも、おもしろい作品だと思います。ちなみにホラーやグロテスク、ドロドロとした愛憎劇などはないのでご安心を。
最近気づいたのですが、私は「薄暗いバックボーンがありながらもひたむきに穏やかに日常を生きている作品」が好きなようです。マニアックなジャンルですが、もしそういう作品があればぜひ教えてください。